WCP社が「AXGPシステムの実用化」に関して
第23回 電波功績賞 電波産業会会長賞を受賞

一般社団法人電波産業会では、総務大臣指定の「電波有効利用促進センター」としての啓発活動の一環として「電波功績賞」を制定し、電波の有効かつ適正な利用に特別な功績を挙げられた方々を表彰しています。 第23 回電波功績賞は、総務大臣賞2件、一般社団法人電波産業会会長賞6件が選出され、平成24年6月20日に松崎総務副大臣のご来臨のもと表彰式が行われました。

このなかで、一般社団法人電波産業会会長賞の一つとして 「AXGP システムの実用化」 Wireless City Planning社 宮川潤一 (取締役COO)が選ばれました。 受賞理由は、 「移動通信分野において、最新のTDD 技術の導入などにより、110Mbps の伝送速度を実現するAXGPシステムを用いたサービスを提供し、電波を有効に利用した広帯域移動無線アクセスシステムの実用化に大きく貢献した」ことです。

受賞した「AXGP システムの実用化」の内容に関して、電波産業会が発行する「ARIB機関誌」N0. 78, 2012 (2012年7月27日発行)に掲載されましたので、その概要を以下に紹介します。
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1 まえがき

当社は2.5GHz帯を使用する広帯域移動無線アクセスシステム(BWA:Broadband Wireless Access)である「XGP」事業を株式会社ウィルコムより2010年12月に承継しました。その後、XGPを高度化させた「AXGP」( Advanced eXtended Global Platform)の開発・導入を推進し、2011年11月に業界最速となる下り110Mbpsの最高伝送速度を実現する次世代ネットワーク・サービスであるAXGPサービスを開始しております。

2 AXGPのシステム概要

2.1 XGPからAXGPへ

「XGP」とは、もともとPHS(Personal Handyphone System)の次世代システムとして開発されたBWAシステムで、技術的には、PHSで既に導入済みの技術であるマイクロセルシステム、TDD技術(Time Division Duplex:時分割複信)をベースに、他のBWA技術でも導入されているOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)や10MHz幅以上の広帯域システム、といった最新の高速化技術を融合して最適化したシステムです。

 XGPは2009年に最大20Mbpsの高速データ通信サービス(10MHz幅システム)として実用化されました。しかしながら、その後スマートフォンの普及などによるデータ通信トラヒックの爆発的な増大が顕在化し、モバイル高速データ通信需要がますます高まる状況の中、他のワイヤレスブロードバンドシステムにおいても数十Mbpsレベルを超えるさらなる高速システムの導入が検討される状況となってきました。一方、従来のXGPシステムにおいては、各ディバイスの流用、共通化によるインフラ設備の低価格化を図ること、さらには効率的な基地局エリア展開を可能とすることなどが、他システムとの競争を行っていく上で大きな課題となっておりました。

 そうした状況にあって、従来の数十Mbpsレベルを超える100Mbps超のデータ通信を実現し、合わせてグローバルシステムとの親和性を高める事を目的に、XGPをさらに高度化させたシステムがAXGPシステムです。

2.2 AXGPの技術概要

AXGPはXGPの特徴である、マイクロセルシステム、TDD、OFDMなどの基礎技術はそのまま継承しつつ、以下に代表されるような変更を加えることで、「伝送速度の高速化」、「グローバルシステムとの親和性向上」、「サービスエリアの改善」などを実現しました。 具体的な高度化内容は以下に示す通りです。

<伝送速度の高速化>

・システム帯域幅を現状の最大10MHz から20MHz へと広帯域化

・上り/下り比率を現状の1:1 のみから、下り比率を高めて高速化ができるよう送信繰り返し周期や送信バースト長を変更

・MIMO(Multiple Input Multiple Output)機能追加

<グローバルシステムとの親和性向上>

・各占有周波数帯幅の見直し(2.5MHz/5MHz/10MHz の各占有周波数帯幅)

・隣接チャネル漏洩電力、スペクトラムマスク、スプリアス領域における不要発射強度などを標準マスクへ変更

・上りの多元接続方式にSC-FDMA(Single Carrier Frequency Division Multi Access )方式を追加

<サービスエリアの改善>

・基地局空中線電力の緩和( 最大40W/20MHz)

・高利得アンテナの導入(最大17dBi)

 

3 AXGPの標準化動向

<略>

4 AXGP実用化状況

4.1 AXGPのネットワーク構築

増大するトラヒックを無線システムに収容するには、マイクロセル化が極めて重要な技術となります。加えて都心部などトラヒックが過密になる地域では、基地局ロケーションをいかに確保するかが、マイクロセル化による電波の有効利用を図るための大きな課題となっております。その課題を解決するため、当社のAXGPのネットワークの構築においては、株式会社ウィルコムより承継したPHS基地局ロケーションを最大限活用したマイクロセルシステムを採用しています。さらにマイクロセル化を容易にするため、PHSとのアンテナ共用を可能とするオムニアンテナ構成を実用化し、基地局については小型なPHS基地局に併設可能なサイズを実現しております。 これにより既存のPHS基地局ロケーションを活用した高密度かつ柔軟なエリア設計を可能としました。

4.2 最大110Mbpsのサービスの実現

さらにAXGPでは、スマートアンテナ等の干渉低減技術を利用することにより、耐干渉能力を向上させ、高速な実効スループットの維持を可能としました。また、今回のAXGPでは、従来の10MHz幅のシステム帯域から、20MHz幅のシステム帯域へと拡大を図っております。この20MHz幅のシステム帯域によるモバイルデータ通信はAXGPが初めて実用化に成功したものです。それに加え、従来の1:1の上下比率を多様化し下り通信の比率を高めることで高速化を図り、更に2×2のMIMOも実装しております。 これらにより最大110Mbpsという高い伝送速度を商用環境で実現することが出来ました。

<略>

5 あとがき

当社は、この度実用化した最大100Mbps超の高速データ通信が実現可能なAXGPシステムにより、ワイヤレスブロードバンドの更なる普及に向けてまい進し、情報通信市場のさらなる発展と活性化を図ると同時に、有限な電波の有効利用に寄与してまいりたいと考えております。

 


<参考> 電波功績賞について

電波産業会では、総務大臣から「電波有効利用促進センター」の指定を受け、電波の有効かつ適正な利用に寄与することを業務として遂行しています。この一層の促進を図るため、1989 年に電波産業会の前身の財団法人電波システム開発センターにおいて制定された「電波功績賞」を引き継ぎ、電波の有効かつ適正な利用に功績のあった方を表彰することとしています。